ポイント:
商品説明
作品紹介
たしかにあった幻
「臓器移植」と「失踪」をテーマに愛のかたちを描く人間ドラマ
2026年02月06日（Fri）公開
先進国の中でドナー数が最下位という日本の臓器移植医療の現状と、年間約8万人にのぼる日本の行方不明者の問題、この２つが本作のテーマ。河瀬直美監督は『あん』で差別と偏見の果てに生きる歓びを求めるハンセン病患者、『光』で失われゆく視力の中に生まれる新たな愛、『朝が来る』では特別養子縁組で救われた命など、旧来の常識や血縁とは異なる、他者との関係性の中に存在する「生」を描いてきた。個人の肉体を超えて息づく命と愛の意味を問いかける本作は、河瀬監督が繰り返し撮り続けてきた喪失と救済の最新地点にある。
先進国の中でドナー数が最下位という日本の臓器移植医療の現状と、年間約8万人にのぼる日本の行方不明者の問題、この２つが本作のテーマ。河瀬直美監督は『あん』で差別と偏見の果てに生きる歓びを求めるハンセン病患者、『光』で失われゆく視力の中に生まれる新たな愛、『朝が来る』では特別養子縁組で救われた命など、旧来の常識や血縁とは異なる、他者との関係性の中に存在する「生」を描いてきた。個人の肉体を超えて息づく命と愛の意味を問いかける本作は、河瀬監督が繰り返し撮り続けてきた喪失と救済の最新地点にある。
- ストーリー
- 神戸の臓器移植センターで働くコリー（ヴィッキー・クリープス）は、移植コーディネーターのサポートスタッフとして、三年ほど前にパリからやって来た。欧米では「Gift of Life」と呼ばれる臓器移植だが、日本での実施はまだ限られており、環境も価値観も追いついていない現状がある。そんな中で、心臓の移植手術を必要とする重症小児を多く受け持つコリーの病院では、少数の職員たちが必死に日々の業務をこなし、切実な状況にある患者やその家族と向き合っていた。ドナーが見つかるということは、別の誰かが亡くなるということ。日本では臓器を提供することも、提供を受けて生きることも、社会に堂々と誇れる文化的背景が育まれているとは言い難い。コリーは治療を続けながらドナーを待つ子どもたちと彼らの家族、移植医療に携わる医師や看護師、院内で働く保育士に教師、息子を亡くしためぐみ（尾野真千子）と病院に出入りするお弁当屋の亮二（北村一輝）らにもカメラを向け、救命と罪の意識の間で葛藤しながら希望を求める彼らの生きた声を記録していく。取材した映像をもとに、日本における小児移植医療の促進を訴えるコリーだったが、変わらない状況に感情が乱れてしまう。最悪な気分で帰宅した彼女を待ち受けていたのは、部屋の床で眠りこける迅（寛一郎）。一年前に旅先の屋久島で出会った迅とは、壮大な自然の中で時間を共にし、生き別れた魂が再会するように惹かれ合った。父親を亡くし、遠い異国の地に暮らすコリーにとって、迅の存在は心の支えでもあった。しかしコリーの自宅で暮らし始めた迅は定職にもつかず、家族のことを尋ねても曖昧な答えを返すばかり。不自由な言語を介しての会話に加え、自身の生い立ちや胸の内を深く語ろうとしない迅とのコミュニケーション不全にも不安を募らせていたコリーは、思わず声を尖らせてしまう。そして次の日、コリーが仕事から帰ると、迅の姿は消えていた。迅の行方は知れないまま、一年が過ぎた。そんなある日、コリーは本棚の奥に一台のハッセルブラッド社製カメラを見つける。それはかつて迅がコリーを撮り続けていたものだった。元・警官の亮二によると、迅の捜索願は7年以上前に彼の家族からも出されていたらしい。このままでは迅が死亡したものとみなされることを知り、コリーは岐阜にある迅の実家へと向かう。その頃、入院生活を送っていた10歳の久志（中村旺士郎）にドナーが現れ、久志は自らの意志で心臓の移植手術を決意する。我が子が生き延びる未来を願いつつも、大勢の子どもたちが長年待機している中で手術を受けることへの後ろめたさを吐露する母親に、「大切なのは、久志君の生きたいという気持ち」だと伝えるコリー。その言葉の先に迅の記憶が重なる。「彼には生きていて欲しい。たとえ見えなくても。私はここにいる」──。
- キャスト
- スタッフ
- 監督：河瀬直美、脚本：河瀬直美
- 作品データ
- 製作年2026年製作国日本／フランス配給ハピネットファントム・スタジオ
